印鑑といえば
ちょっとふしぎな現象のようにも思えるのだが、実は患者の死体からも問題のウィルスは出てない。
ただ、患者が生きているときに採血した血液から、ウイルスらしきものは検出されている。
そのあとも議論は続いた。
そして最終的には、次の事項がこの日の会議の結論として発表されることになった。
その要旨は、1:新型のウイルスによるものとみられる感染症は、強烈なものであると考えられるので、WHOの勧告に従って、わが国でも法定伝染病として指定する。
2:ペット(特に、犬、猫など)が媒介している危険性が高いので、ペットを飼っている家庭では、厳重に警戒されたい。
3:これまでのところは、いったん発病すると約10時間ぐらいの間に、肺と脳に決定的なダメージを受けて死ぬ。
これまでのところ、死亡率は約100パーセントである。
4:目下のところ、この病原はウイルスと想定されている。
香港では、このウイルスを見つけたという報告があるが、これは、かなり正確度が高いと思われる。
まだ十分な追認が行われていないが、早晩確認されるものと思われる。
5:これは未確認情報であるが、一部に、かつて1960年代に流行した香港型インフルエンザウイルスが、ブタの中で棲息していて、それが変性して、とてつもないものになったのではないかともいわれているが、今後の確認が急がれる。
以上のことをプリントにするとともに、保健医療局長は、この旨を内閣官房長官のところに電話して、総理に連絡してもらうように依頼した。
ときに午前零時に3分前であった。
深夜のことではあったが、1月2日は新聞の休刊日であったこともあって、テレビ、ラジオは、どちらも臨時ニユースとして、これを流した。
テレビ局には、回線がパンクするぐらい相談電話がかかってきた。
当然といえば当然のことだが、一番多かったのはペットを飼っている大丈夫かというものだった。
テレビ局では答えようがない。
翌朝、保健所に聞いて下さいとしかいいようがなかった。
しかし、深夜のテレビを見てから、直ちに、飼っているペットを捨てに行く気の早い人も多く、それを車で運んだのだが、車の消毒はどうしたらいいのかという相談まであった。
なかには、ニワトリは大丈夫かとか、ハムスターやトカゲはどうかといった質問もあって、テレビ局を困らせた。
もっとひどいのは、「先刻ペットが絞種の上にオシッコをしたが、これは、紬種ごと焼いたほうがいいか、それとも明日の朝まで待っても大丈夫か」といったことまで質問された。
なにしろ、テレビ局には、そんなことの専門家がいるはずはない。
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